脾臓 ー 血液循環を監視する免疫臓器とリンパ球の役割
脾臓は、私たちの体の中でユニークな位置を占める臓器です。元来、造血や老廃赤血球の処理を担っていましたが、生物の進化、特に陸上への進出と胸腺システムの確立を経て、血液循環系における主要な免疫監視器官へとその機能を拡大しました。
脾臓 ー 循環血液系の免疫司令塔
脾臓は、胃の周囲の血管系から進化し、当初は造血や老廃した赤血球を処理する臓器として機能し始めました。その後、胸腺で産生されるT細胞の受け皿としての機能が追加されました。興味深いことに、陸上生物になる前の魚類においても、脾臓はすでに進化を遂げています。
生物が陸上へと進出し、胸腺システムが確立されてから、脾臓に免疫臓器としての機能が加わります。このとき、胸腺由来のT細胞が集まる部位が白脾髄と呼ばれるようになりました。一方で、元々の造血や赤血球処理を担っていた部位はそのまま残され、赤脾髄と呼ばれています。
免疫臓器としての脾臓の主な役割は、循環血液系に入った抗原を集めて処理することです。これは、リンパ節がリンパ液中に侵入した抗原を捕捉する機能と対比できます。ただし、循環系に入った抗原の処理は肝臓でも行われますが、肝臓は主に動脈血や門脈血中の抗原を捕捉する点が異なります。
出生後、赤血球造血は通常骨髄のみで行われますが、骨髄機能が低下したり、マラリアに感染したりする場合には、脾臓や肝臓で再び造血が始まります。脾臓における赤血球造血巣は、もちろん赤脾髄です。
脾臓にはT細胞に加えてB細胞も存在し、むしろB細胞のほうが多くなっています(T細胞:B細胞=4:6)。 この点が、T細胞が優位なリンパ節とは異なります。
脾臓でも抗原刺激があると、リンパ濾胞が明確になり、ここでB細胞の分裂・増殖が行われます。その中心部は胚中心と呼ばれることもあります。リンパ濾胞に隣接して、動脈周囲リンパ組織鞘(PALS)と呼ばれるT細胞領域があり、B細胞の分化・成熟を助けています。
この記事を読めば、免疫について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!
今回の講義の概要
・脾臓の機能と進化
・脾臓の構造とリンパ球構成
・抗原応答と特殊な役割