免疫 38

免疫 38 新しく上乗せされた免疫組織

新しく上乗せされた免疫組織 ー 胸腺の進化と造血組織の移行

生物の進化の過程で、環境適応に伴い身体のシステムは大きく変化してきました。特に免疫組織においては、生物が水中から陸上へと生活の場を移したことが、既存の防御システムに新たな層を「上乗せ」する画期的な転換点となりました。

この記事を読めば、免疫について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

・胸腺の誕生と役割
・造血組織の骨髄への移行
・免疫システムの多層化

新しく上乗せされた免疫組織

生物が水中で鰓(えら)呼吸を行っていた進化レベルでは、全身の免疫組織はかなり一様なパターンで並行して進化し続けていたと考えられます。上皮細胞が特殊な機能を分担する一方、その周囲を取り巻くリンパ球が防御を担い、この防御機能は進化を続けていました。

しかし、生物が陸上へと進出したことで事情は一変します。肺呼吸へ移行したため、鰓とその周辺のリンパ球は必要なくなりました。このとき、鰓と鰓穴が合体して新たな免疫組織を形成しました。それが胸腺です。胸腺で産生されたリンパ球(T細胞)は、リンパ節や脾臓に送られて定着し、体の内部で外来抗原を監視する免疫組織として機能するようになりました。つまり、これはこれまでの古い免疫システムとは異なり、自己応答性のクローンを除外し、もっぱら外来抗原向けのシステムとして進化したのです。

このような新しい免疫システムの上乗せと同時に、もう一つの重大な現象が起こりました。それは、血球を産生する造血組織が、肝臓や腎臓から骨髄へと移行したことです。生物が陸上へ進出したことで、水中での酸素濃度約1%の環境から、空気中の酸素濃度約20%という高酸素環境に曝され、強い酸素ストレスに直面しました。これにより、胎児期の造血組織は大きな影響を受けましたが、酸素結合能力の高い成人型ヘモグロビンを進化させ、骨髄造血を開始した生物は、この酸素ストレスを克服できるようになったのです。

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