腸管の免疫機構ー上皮細胞とリンパ球の協調、特殊なT細胞の存在
腸管 上皮細胞、上皮内リンパ球、粘膜下リンパ球、そしてγδT細胞やCD8⁺T細胞…。これらのキーワードは、私たちの腸内で繰り広げられる複雑な免疫ネットワークを理解する上で欠かせません。この記事では、これらの細胞たちがどのように連携し、私たちの健康を守っているのかを詳しく解説します。
古くからある免疫組織
腸管
人間の腸の内側を覆っている細胞(腸管上皮細胞)は、体の中に異物が入ってこないように守る役割をしています。
- 低等動物では、腸の細胞自体がリゾチーム(加水分解酵素)という酵素を用いて異物を分解し、防御を行います。
- 高等哺乳類(人間など)では、腸の細胞がリンパ球という免疫細胞に主な防御を委ねています。ただし、免疫に関わる補体タンパク質の多くは腸細胞が生成し、防御の一部を支えています。
腸管を取り巻くリンパ球には、上皮内リンパ球と粘膜固有層リンパ球が存在します。これらはどちらも胸腺外で分化するT細胞ですが、表面マーカーに若干の違いが見られます。上皮内リンパ球と粘膜固有層リンパ球は、ともにαβT細胞とγδT細胞から構成されますが、前者の方がγδT細胞の割合が高いことが知られています。
・上皮内リンパ球:腸の細胞のすぐそばにいるリンパ球
・粘膜固有層リンパ球:腸の粘膜のさらに奥にいるリンパ球
これらのリンパ球は、どちらも胸腺という場所を通らずに腸で育つT細胞という種類の免疫細胞です。ただ、表面についている目印のようなもの(MHC:表面形質)に少し違いがあります。
上皮内リンパ球と粘膜固有層リンパ球は、どちらもαβT細胞とγδT細胞という種類のT細胞からできていますが、上皮内リンパ球の方がγδT細胞をたくさん含んでいます。
さらに、上皮の中にいるαβT細胞とγδT細胞のほとんどが、CD8⁺という目印を持っているのが大きな特徴です。通常の末梢血リンパ球ではαβT細胞が多く、CD4⁺細胞が優勢であることとは対照的です。これは、腸の表面にいるT細胞が、何か特定の異物(抗原)や目印(MHC)を認識して働いている可能性があると考えられています。
腸の免疫の仕組みは、進化の過程で特殊になってきていて、NK細胞という別の免疫細胞の目印(NKマーカー)を持つT細胞(NKT細胞)は、ほとんど見られません。しかし、小腸にはNKT細胞がほとんどいないのですが、大腸には少しだけ存在します。マウスではNK1.1⁺T細胞、人間ではCD56⁺T細胞として見つけることができます。
この記事を読めば、免疫について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!
今回の講義の概要
・腸の内側を覆っている細胞の働き
・腸管を取り巻くリンパ球
・腸の免疫の仕組み