外来抗原対応の進化とT細胞の役割
外来抗原に向けて働くT細胞
T細胞の最大の特徴は、自己応答性を持つ禁止クローンを除去していることです。胸腺での負の選択の結果、一部のクローンしか生き残りません。この現象の本質は、進化の極限に達したT細胞の反応性が強くなりすぎて自己応答性が危険になったため、自己応答性を持つT細胞が除去され、外来抗原に対するシステムが作られたと考えられます。
胸腺は元々えらであったため、生物が上陸した際に胸腺が進化し、このシステムが追加されたと考えられます。水中から陸上に進出することにより、外来抗原の処理が急増したことでしょう。それまでの免疫システムは内部の異常を監視するもので十分でしたが、新たな外来抗原に対応するための免疫システムが必要となり、胸腺とそこで分化・成熟するT細胞が出現しました。
T細胞はこのようにして外来抗原向けのシステムとして進化し、内部異常の監視はNK細胞や胸腺外分泌T細胞に委ねられました。自己免疫疾患の多くは胸腺でのT細胞分化の失敗ではなく、NK細胞や胸腺外分泌T細胞の異常活性化によって引き起こされると考えられています。
マウスの胎児期の胸腺では、14日目に胸腺原基が現れ、リンパ球が出現し始めます。NK細胞、γδT細胞、αβT細胞の順にリンパ球が出現し、最終的にαβT細胞だけが出生時および出生後も残ります。この現象は、進化の過程が個体発生にも反映されていると考えられます。つまり、えらの時代にNK細胞がマクロファージから進化し、その後、腸のようにγδT細胞が進化し、最終的に胸腺でαβT細胞が生成されるに至ったのです。
このような進化は、上部消化管であるえらだけでなく、下部消化管の腸や肝臓でもやや遅れて並行して起こっていたと考えられます。ただし、えらのように極端な進化は見られませんでした。胸腺では、CD4⁺CD8⁺という段階を経てT細胞が分化しますが、この現象は腸にもわずかに残っています。腸管上皮内リンパ球に見られるCD4⁺CD8⁺αβT細胞は加齢とともに増加します。
この記事を読めば、免疫について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!
今回の講義の概要
・胸腺でのT細胞の進化と役割
・外来抗原対応と内部異常監視の分担
・進化の過程と個体発生の反映