免疫 14

シンビジウムの花

コルチゾール の分泌が免疫に及ぼす影響ーストレスと健康の関係性

この記事を読めば、免疫について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

コルチゾールの役割と影響
免疫抑制作用と抗炎症作用
過剰なコルチゾールの影響と副腎皮質不全

副腎皮質ホルモンによる調節

副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン1であるコルチゾールは、生理的には早朝起床する前に分泌されます。この分泌刺激によって私たちは目が覚めて、活動する体調が作られます。日中の交感神経優位の体調を作り出しています。これは、ステロイドホルモンを内服すると、生活のリズムが狂い、次第に体調がすぐれなくなる理由でもあります。

このようにステロイドホルモン生理的な分泌のほかに、精神的身体的な強いストレスのときにも副腎からステロイドホルモンは分泌されます。そして、このステロイドホルモンの働きによって胸腺2が萎縮し、胸腺内のT細胞分化が停止します。ステロイドホルモンの量が多いときは、分化し終わって末梢に出たT細胞さえ死滅することがあります。胸腺でも末梢でもT細胞3はアポトーシスによって核が断裂して死滅します。

免疫を抑制するステロイドホルモン

外用薬のステロイドホルモンでも、胸腺の萎縮や末梢のT細胞死が引き起こされます。これはステロイドホルモンの免疫抑制作用として知られる現象です。

ステロイドホルモンによる免疫抑制の対象となるリンパ球は、進化の高いT、B細胞で、系統発生学的に古いNK細胞や胸腺外分化T細胞はステロイドホルモン抵抗性です。また、顆粒球もステロイドホルモン抵抗性です。

またステロイドホルモンは、強い抗炎症作用を持つことでも知られています。この抗炎症作用は組織反応の一時的消失によるもので、炎症を根本からなくすものではありません。原因が取り去られないと、ステロイドホルモンの効果が切れたときに再び炎症が起こります

ステロイドホルモンは、性ホルモン、アルドステロン、ビタミンDと同様にコレステロール骨格を持ち、コレステロールから生合成されます。生理的濃度のステロイドホルモンはしっかり尿から排泄されますが、外から投与されたものは組織に残り、その後変性します。

変性したステロイドホルモンは、長く組織に停滞して酸化コレステロールとなり、胆汁酸として肝臓から排泄されることになります。しかし、普通のコレステロールと同様に、次第に組織に残り、動脈硬化などを引き起こし、老化を促進することになります。

変性ステロイドホルモンは、他の過酸化脂質と同様に老化を促進する他に、体調を交感神経優位に導き、多くの交感神経刺激症状を表します。頻脈、高血圧、糖尿病、不安感、易疲労性などです。その一つとして、全身に顆粒球増多を招き、常在菌との反応で化膿性の炎症を引き起こしやすくなります。これがステロイドホルモン本来の免疫抑制によるリンパ球減少と合わさり、容易に感染症を引き起こします。

ヒトの副腎皮質不全はアジソン病として知られています。脱力や皮膚の色素沈着が起こります。マウスで副腎摘出を行うと、マウスは塩水を飲まないと死に至り、特に活動性はほとんど失われてしまいます。このように生体にとって欠かすことのできないステロイドホルモンですが、外から過剰に投与された場合は、老化をはじめとしたあらゆる病気を引き起こす可能性があります。

ストレスによって分泌されるステロイドホルモンは胸腺萎縮を引き起こしますが、この真の目的は進化レベルの高い通常のT、B細胞の免疫系を進化レベルの古いNK細胞や胸腺外分化T細胞の免疫系にスイッチするためだと考えられます。

ストレスによって生じた障害自己細胞は速やかに除去されるために、NK細胞胸腺外分化T細胞が働きます。これらの古いタイプのリンパ球は自己応答性を持ち、障害自己細胞を除去する力を持っています。

  1. ステロイドホルモン:ステロイドホルモンは、私たちの体内で重要な役割を果たすホルモンの一種です。コレステロールを原料として作られ、主に副腎や生殖腺から分泌されます。 ↩︎
  2. 胸腺(thymus gland):胸腺は、胸骨の裏側、心臓の上部に位置する臓器です。主に免疫系において重要な役割を果たしており、T細胞と呼ばれる免疫細胞を成熟させる場所として知られています。 ↩︎
  3. T細胞:T細胞は、私たちの免疫系の中心的な役割を担う細胞の一種です。胸腺(胸腺)で成熟するため、その頭文字を取ってT細胞と呼ばれています。 ↩︎

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