免疫 84 加齢の免疫

加齢と免疫の転換。

加齢=免疫低下は間違い?老人に適した免疫システムへの転換とは

「歳をとると免疫力が落ちる」というのは、本当でしょうか?

「最近、風邪をひきやすくなったし、治りにくい」
「歳をとると免疫力が落ちるから、仕方がない…」

そんなふうに諦めてはいませんか? 実は、「加齢とともに免疫系は衰える」というのは、これまでの免疫学の常識でした。

確かに、免疫に重要な臓器である「胸腺きょうせん(新しいT細胞を育てる場所)」は加齢で縮みます。 新しいリンパ球(T細胞、B細胞)の数や、外敵への増殖反応も低下していくのは事実です。

しかし、この現象の背後には、「加齢に適した特有の免疫体制」を敷くための、免疫システムの「転換」が隠されているのです。

加齢の免疫は、一面から見れば「免疫低下」ですが、大きな視点で見れば、老年の身体に適した別の防御体制をとるという、合目的的な変化と言えます。

出生から百寿まで ~ 一生の間に決まったパターンを経過する

私たちの身体を守るシステム(生体防御系)は、主に顆粒球かりゅうきゅう」と「リンパ球」から成ります。 そして、オギャーと生まれてから死を迎えるまでに、必ず決まった免疫パターンを経過します。

  • 胎児期
    顆粒球やリンパ球はすでにできていますが、数は極めて少ない状態です。
  • 出生時(激しい交感神経緊張)
    肺呼吸の開始による酸素ストレスや刺激により、顆粒球が急激に増えます。これは、激しいストレス(交感神経緊張状態)によって引き起こされる反応です。
  • 新生児〜子供(副交感神経優位)
    出生直後の顆粒球増多は3〜4日でおさまり、子供特有の「リンパ球優位」の体質となります。これはリラックスの神経(副交感神経優位)によってもたらされ、成長のためのエネルギーを吸収するためのものだと考えられます。
  • 成人(20歳以降)
    顆粒球優位の成人型白血球パターンとなります。
  • 老人(交感神経優位)
    加齢とともに身体の分子の酸化が進み、この刺激がストレス(交感神経優位)の体調をつくり、老人特有の白血球パターンをつくります。 顆粒球増多の傾向は次第に強まり、リンパ球が底をついた時点で、死に至ると考えられます。

加齢に伴って増加する「古いリンパ球(胸腺外分化T細胞)」

加齢に従って顆粒球が増えますが、実は同時に、通常とは別のリンパ球群も数が増加します。 それが、NK(ナチュラルキラー)細胞胸腺外分化きょうせんがいぶんかT細胞です。

  • NK細胞
    加齢で一度増えますが、途中で増加が止まり、むしろ減少していきます。
  • 胸腺外分化T細胞
    胸腺に頼らず育つ、古いタイプのリンパ球。加齢とともに増加し、最期まで保たれます。

この白血球の加齢変化は、血液中だけでなく全身で起こります。 特に、腸管、肝臓、外分泌腺1のリンパ球はもともと胸腺外分化T細胞であり、ここで数が増加していきます。

老人に集まるリンパ球は「異常自己」を監視するシステム

老人の涙腺や唾液腺(顎下腺)のまわりには、多数のリンパ球が集まり、あたかも自己免疫疾患のように見えることがあります。 また、老化により、全身の臓器へのリンパ球の蓄積が見られます。

実は、これらも病気というより、加齢に伴って身体の中に生じる「異常自己(老化して異常になった細胞)」を監視し、処理するための免疫システムの拡大という意味を持っていると思われます。

老人の外分泌腺に集まる反応がゆるすぎると、涙や唾液が出にくくなってきます。

まとめ ~ 加齢の免疫は低下ではなく、身体の「理」に適った防御体制への変化

この記事の重要なポイントをまとめます。

  1. 「加齢=免疫低下」は一面的な見方であり、実際には老人の身体に適したシステムへの「転換」である。
  2. 一生を通して、子供(リンパ球優位)→成人(顆粒球優位)→老人(さらに顆粒球優位)という決まったパターンを経過する。
  3. 加齢に伴い「胸腺外分化T細胞」が増加し、全身の臓器で「異常自己」への監視を強化している。

加齢による免疫の変化は、からだが過酷な環境(酸化刺激など)の中で、生き抜くために合目的的に起こしている防衛体制の変化です。

「衰え」と捉えて不安になるのではなく、身体が本来持つ「ことわり」を深く理解し、納得して加齢と向き合うこと。それが、真の健康へと向かうための、東洋医学的・全体論的なアプローチとなります。

  1. 涙、唾液、汗、消化液などを分泌する腺 ↩︎

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