【コラム】「頑張れない自分」に悩むあなたへ ― コロナ後遺症からの回復ガイド (2025/06/12)

「頑張れない自分」に悩むあなたへ ― コロナ後遺症からの回復ガイド

長いトンネルの先に光は見えるか~コロナ後遺症と向き合う私たちへ~

はじめに

新型コロナウイルスの流行から数年が経ち、社会は徐々に日常を取り戻しつつあります。しかし一方で、「コロナ後遺症」という見えないトンネルの中で、今も苦しみ続けている方が多くいます。

コロナ後遺症とは

急性期の症状(発熱や咳など)が治まった後も、さまざまな不調が長く続く状態を指します。

主な症状には

  • だるさ(倦怠感)
  • 集中力や記憶力の低下(ブレインフォグ)
  • 息切れ・呼吸のしづらさ
  • 睡眠の質の低下
  • 脱毛、関節痛、味覚・嗅覚障害
  • 気分の落ち込み、不安感

などがあり、症状は人それぞれ異なります。検査では異常が見つからないことも多く、周囲から理解されにくいことが、さらに心の負担となります。

「頑張りたいのに頑張れない」その正体

コロナ後遺症の一つの特徴は、「行動と休息の切り替え」ができなくなることです。

  • 「動こう」と思っても体が動かない
  • がんばろうとすると無意識にブレーキがかかる
  • 何をするにも力が入らない
  • 気持ちだけが焦ってしまう

このような状態は、自律神経や神経伝達の乱れが原因と考えられます。スイッチがうまく入らない、あるいはアクセルとブレーキを同時に踏んでいるような感覚。そして、そのスイッチを動かすための「燃料」が足りていないのです。

その燃料とは、エネルギー)・栄養)・体内の巡り)、そして現代医学で言えばホルモン・血流・ミネラル・自律神経の安定といった要素です。

東洋医学から見たコロナ後遺症

東洋医学では、体のバランスを「五臓六腑」によって捉えます。 特にコロナ後遺症で関係が深いとされるのは

  • かん…エネルギーの発散・活動・自律神経に関係
  • じん…体の冷却・回復・根本的な生命力に関係
  • はい…呼吸・免疫・体表のバリアに関係

これらの臓腑のバランスが崩れることで、「動けない休めない回復しない」という悪循環に陥ってしまうのです。

性格傾向と心のケア

臨床の現場では、以下のような性格傾向の方が後遺症に悩みやすいとされています。

  • 真面目で努力家
  • 几帳面で責任感が強い
  • 細かいことが気になる
  • 失敗や反省を引きずりやすい
  • 寝不足や過労が慢性化している
  • 常に頑張ろうとする傾向がある

このような気質は長所でもありますが、体や神経が疲れ切っているときには回復の妨げにもなりえます。

変えられることに目を向けて

性格そのものは簡単には変えられません。ですが、生活のあり方や考え方のクセ、体との向き合い方は、意識すれば少しずつ変えていくことができます。

具体的にできること

  • 生活リズムの見直し(早寝早起き、十分な休息)
  • 「休むこと」に罪悪感を持たない習慣づけ
  • 呼吸や姿勢の再確認、ゆっくりとした体の使い方
  • 体力・筋力の維持と回復(無理のない範囲で)
  • 考え方の柔軟性を持つ(「今は休む時」と割り切る)

回復へのアプローチ 医学と東洋医学の併用

現代医学では、特効薬はまだ確立されていませんが、対症療法やリハビリテーションにより、少しずつ体力や機能を取り戻すことが可能です。

また、東洋医学の視点も後遺症の回復に有効です。

  • 漢方薬
    個人の体質に応じて、「気・血・水」のバランスを整える
  • 鍼灸治療
    自律神経の安定、免疫力の調整、回復力のサポート

これらは、西洋医学ではカバーしきれない「不調」と向き合う手段の一つとして、注目されています。

「無理をしない」勇気と、段階的な回復(ペース配分)

後遺症に悩む方に共通する傾向として挙げられていた「真面目で責任感が強い」という点は、回復過程において特に注意が必要です。良くなりたいという気持ちから焦ってしまい、活動量を急に増やすと、かえって症状が悪化する「クラッシュ(Pacingの失敗)」を引き起こすことがあります。

  • エネルギーの管理
    自分の体力を「充電池」のように捉え、残量を意識しながら活動することが大切です。「がんばる」と「休む」のメリハリをつけ、エネルギーを使い果たさないようにペース配分を心がけましょう。
  • スモールステップで
    「今日は5分だけ散歩する」「今日はこの家事だけやる」というように、ごく小さな目標を設定し、達成できたら自分を褒めてあげましょう。少しずつ、着実にできることを増やしていくことが回復への近道です。

周囲の方々へのお願い

ご家族や職場など、身近な方にコロナ後遺症で苦しんでいる方がいる場合、その辛さは外からは見えにくいため、どう接すればよいか戸惑うこともあるかもしれません。

大切なのは、ご本人の「辛い」という言葉をそのまま受け止め、否定せずに寄り添う姿勢です。日によって症状の波があることも特徴の一つです。昨日できていたことが今日はできない、という状況も十分にあり得ます。「無理しないでね」という一言や、具体的なサポートの申し出(買い物や家事の代行など)が、ご本人の大きな支えとなります。

一人で抱え込まないでください

コロナ後遺症は「見えにくい病気」です。そのため、周囲の理解を得られにくく、孤独を感じやすいものです。ですが、それでも大切なのは ーー あきらめないこと。

信頼できる医師や専門家に相談すること。 無理せず、今できることを少しずつやってみること。 そして、自分を責めず、回復のプロセスを「自分の歩幅」で歩むことです。

トンネルの出口は、きっとあります。 その光に向かって、ゆっくりでも前に進めば、必ず道は開けていきます。 私たち医療者や支援者は、あなたの一歩を心から応援しています。

ご相談はお気軽に

当院では、コロナ後遺症の方のための東洋医学的カウンセリング・鍼灸治療を行っております。 あなたの心と体の声に寄り添い、丁寧に対応いたします。