【コラム】 コレステロールの重要性 (2025/04/24)

脳機能の維持に不可欠な栄養素:コレステロールの重要性

脳と身体の健康を維持する上で、コレステロールは決して無視できない重要な栄養素です。特に、生命維持に不可欠なホルモンであるコルチゾールの生成、そして脳の情報伝達を担う神経鞘の形成という二つの側面から、その重要性を深く理解する必要があります。

まず、コレステロールは副腎皮質から分泌されるコルチゾールの主要な材料となります。コルチゾールは、糖新生、たんぱく質代謝、脂肪分解といった代謝プロセスを促進するだけでなく、抗炎症作用や免疫機能の調整にも関わる、生体にとって必要不可欠なホルモンです。したがって、コレステロールが不足すると、コルチゾールの産生が滞り、これらの重要な機能に支障をきたす可能性があるのです。

さらに、コレステロールは脳細胞を構成する上で極めて重要な役割を担っています。それは、神経線維を覆い、電気信号が漏れないように絶縁する役割を持つ「神経鞘」の主要な材料となるからです。神経鞘は、例えるならば電気コードの絶縁シースのようなもので、神経細胞間の正確かつ効率的な情報伝達を支えています。もしコレステロールが不足すると、この神経鞘が十分に形成されず、神経回路が漏電したような状態になり、脳の情報伝達機能は著しく低下してしまいます。その結果、脳疲労感や思考力の低下はもとより、うつ症状や感情の不安定さといった精神的な問題、さらには自閉症や慢性疲労といった症状との関連性も指摘されているのです。

現代社会においては、「高コレステロールは悪、低コレステロールは善」という認識が一般的かもしれません。しかし、実際には、適度に高いコレステロール値を維持している方が、心身ともに活力に満ちているという見解も存在します。一般的な目安として、肉食を中心とする食生活を送っている方の場合、総コレステロール値は180〜200㎎/dL程度が推奨されます。もし160㎎/dLを下回るようなら、コレステロール不足による様々な症状が現れる可能性を考慮する必要があります。一方、菜食主義の方の場合、総コレステロール値が160㎎/dL程度でも特に問題はないと考えられますが、120〜130㎎/dLを下回るような極端な低コレステロールは、やはり注意が必要です。また、LDLコレステロール値のみに着目する場合、血管疾患の既往歴がない方であれば、100〜140㎎/dL程度が適切な範囲と言えるでしょう。

コレステロールが適切に産生され、血液中をスムーズに運搬されるためには、良質なタンパク質の存在が不可欠です。タンパク質はコレステロールと結合し、血液という運搬システム内を移動させる「トラック」のような役割を果たします。そのため、肉食の方も菜食の方も、日々の食事において良質なタンパク質をしっかりと摂取することが、コレステロールの適切な代謝と機能維持にとって極めて重要です。

最後に、加齢に伴いコレステロール値が上昇する傾向について触れておきましょう。これは、体が長年の間に蓄積したコレステロールを活用し、代謝の低下に即座に対応しようとする、一種の生体防御反応と考えられます。したがって、安易に薬によってコレステロール値を下げ続けることは、脳への重要な栄養供給を減少させることにつながりかねません。長期的に薬を服用した場合、脳が慢性的な栄養不足に陥り、結果として認知症のリスクを高める可能性も指摘されているのです。

以上の点を踏まえると、コレステロールは単に「悪者」として捉えるのではなく、脳機能をはじめとする全身の健康維持に不可欠な栄養素として、その重要性を再認識する必要があります。適切なコレステロール値を維持し、バランスの取れた食生活を送ることが、健やかな生活を送る上で非常に大切であると言えるでしょう。

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