【コラム】 熱中症 予防と水分摂取の注意点 (2025/04/23)

熱中症 予防と水分摂取の注意点

熱中症 は、高熱環境下での体温調節機能の破綻と、それに伴う体内水分・ミネラルバランスの異常によって引き起こされる多岐にわたる身体不調の総称です。その予防には、体温調節機構を正常に機能させ、体内の水分・電解質バランスを適切に維持することが不可欠となります。

体温調節の主要なメカニズムは発汗と呼吸です。発汗による気化熱の放出は体温を下げる有効な手段ですが、疲労や睡眠不足は発汗機能を低下させ、体内に熱がこもりやすくなります。また、空調の効いた快適な環境下での生活は汗腺の退化を招き、必要な状況下での発汗を妨げる可能性があります。加えて、高湿度の環境下では汗の蒸発が阻害され、体温を下げる効果は限定的となります。このような場合は、皮膚表面の汗を拭き取るなどの対策が必要です。緊急時には、頸部、腋窩、鼠径部などの太い血管を冷却することで、効率的に体温を下げることが可能です。

熱中症予防の基本は、質の高い睡眠による疲労回復、適度な運動による発汗機能の維持、そしてバランスの取れた食事による適切な水分・ミネラル補給です。鍼灸治療は、身体の疲労回復を促進し、自律神経のバランスを整えることで、体温調節機能や体内バランスの改善に寄与する可能性があります。

近年、熱中症対策として推奨される水分摂取ですが、その量には慎重な考慮が必要です。熱中症は脱水症状のみならず、血管系や腎臓をはじめとする臓器に深刻なダメージを与える可能性があります。特に腎臓は、血液の濾過、老廃物・有害物質の排出、水分・電解質バランスの調整など、生命維持に不可欠な機能を担っています。

発汗による体液量の減少は、血流量の低下を招き、腎臓への血流を減少させます。これにより、本来排出されるべき老廃物が体内に蓄積し、全身に悪影響を及ぼす可能性があります。また、大量の発汗は体液中の電解質バランスを崩し、痙攣、浮腫、心不全、意識障害といった重篤な症状を引き起こすこともあります。熱中症は、急性腎不全を併発し、生命を脅かす危険性も内在しています。血管系の脆弱な高齢者や糖尿病患者においては、特に腎機能への注意が求められます。

過度な水分摂取は、腎臓の処理能力を超え、腎臓に過剰な負担をかけ、腎機能の低下を招く可能性があります。特に、冷たい飲料やアルコール類など利尿作用のあるものの過剰摂取は、そのリスクを高めます。体質や生活習慣、睡眠状態によって適切な水分量は異なりますが、一般的に1日に2リットルを超える水分摂取は、腎臓への負担を考慮する必要があります。

むくみや倦怠感を感じるにもかかわらず、多量の水分を摂取し続けている場合は、一度水分摂取量を見直すことが推奨されます。熱中症予防においては、適切な水分補給とともに、個々の体調や環境に応じた総合的な対策が重要となります。

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